醤油作り

soy sauce making

奈良盆地南西端、山麓の静かな里にある小さな醤油蔵です。
大切に使ってきた杉の大桶に奈良県産大豆を贅沢に仕込み、
じっくりゆっくり寝かせて醸造しております。

どんな腕前、技術をもってしても原材料以上の物は決して出来ないと思いっています。
できれば近隣で作り手の顔の見える、お客様に誇らしく説明できるもので醤油を作りたい。

その貴重、希少な原料を作ってくださった方々の思いを引き継ぎ、原料の持つ力、可能性を余すことなく生産する醤油に移し、注ぎ込むことが私たちの仕事と思っています。

木桶仕込みのこだわり

Wooden Barrel brewing

伝統の仕込み容器 木桶(きおけ)

木桶は江戸中期に多く作られるようになり、仕込み、醗酵容器として古くから清酒、味噌、醤油など日本の醸造業を支えてきました。コストや手間暇の関係で現在99%の醤油はFRPやステンレスの大型醗酵タンクによって作られています。日本で生産される醤油のうち、わずか1%が木桶によって醸造されています。
弊店では、製造する醤油の全量を木桶で醸造しています。

発酵の要(かなめ) 木桶

木桶は生きています。これまで醤油を作ってきた酵母や乳酸菌などが木桶の木質の中に棲みついています。それも一種類ではなく、たくさんの種類の菌が棲みつき、一斉にせめぎあいながら多彩な発酵を繰り広げます。木桶以外の容器にはこの様なことがありません。見た目同じの木桶でも、1本ずつ個性を持っています。

大豆の話し

弊店使用の大豆

Soybeans we use

奈良県でとれた大豆を使いたい。

片上醤油は主原料に地元奈良県産大豆を使用しています。
奈良県産大豆、量こそ少ないのですが、品質は他の産地に引けはとりません。
フードマイレージとか地産地消とかそんな言葉もありますが、素直に奈良の醤油屋ですから、
奈良県で採れたものを使わせてもらおうと思っています。
生産者、ユーザーが互いに顔も名前も知っている関係が何より大事なことだと思います。
片上醤油のために今年も種を蒔こう、○○さんが丹精込めて作ってくださった大豆を美味しい醤油にしなくては。
私たちは畑からお客様まで全力のリレーで醤油をお届けするチームなのです。

奈良県産の凄い大豆たち

現在使用している奈良県産大豆は、サチユタカ、アヤミドリ、大和大鉄砲の三種類。
片上醤油製造の多くはサチユタカで作られます。サチユタカは「JAならけん」の奨励品種。
タンパク質の含有量が多く、醤油、味噌、豆腐などの製造に向いています。
フクユタカとエンレイという大豆界の2大スター?を掛け合わせて育種されるサラブレッドのような大豆です。
アヤミドリは青大豆という、熟しても緑色の大豆で、青大豆醤油の原料です。
鮮やかな緑色のほかに黄色い大豆と比べ、糖分が多く、脂分が少ないという特徴があります。
栽培が難しく収量も少ないので、貴重、希少な大豆ですが、
この大豆の蒸しあがったときの美味しさ、甘さは言葉にできないほど・・・
サチユタカとアヤミドリは主に奈良県天理市の南檜垣営農組合の皆さんが栽培してくださっています。
そして大和大鉄砲大豆(やまとおおでっぽうだいず)。奈良県内の農家さんが自家用に植え継いできた在来種です。
種苗会社による掛け合わせなどの品種改良を経ていない原種と言えます。
その名前の通り超大粒で味わいはふくよかで上品。
素晴らしい大豆なのですが、収量の少なさ、栽培の手間暇から絶滅の危機にありました。
しかし、この大豆に惚れこんだ豆腐メーカー有限会社三木食品工業の近藤さんが復活に取り組み、
田原本町の鎌田ファームさんと共に僅か10kgの種から播種と収穫を繰り返し、徐々に栽培面積を広げてきました。
収穫された大和大鉄砲大豆はこの復活運動に携わる豆腐、味噌、醤油、ゆば、きな粉などを製造するメンバーにのみ供給されます。
言ってみれば「お金では買えない」大豆なのです。

醤油作りの工程

Soy Sauce Making Process